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2009年10月30日 (金)

『母なる証明』ポン・ジュノ監督インタビュー

『母なる証明』ポン・ジュノ監督インタビュー

『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』などのポン・ジュノ監督待望の新作『母なる証明』

凄惨な女子高生殺人事件に巻き込まれ、その容疑者となった息子と、息子の無実を信じて真犯人を追う母の姿を追ったヒューマン・サスペンスだ。母を演じるのは、“韓国の母”と称され国民的人気を誇るベテラン女優キム・ヘジャ。何があっても子供を守りぬく強い信念を体現する、その見事な演技は圧巻だ。息子トジュンを演じるのは、映画出演は5年ぶりとなる人気俳優ウォンビン。兵役後、復帰第1作にふさわしい難役を見事に演じ切っている。そんな新旧実力派の名演を得て、凡百のミステリー映画とは一線を画す、人間の善と悪を露わにした心揺さぶる傑作となった。

今回は本作の監督であるポン・ジュノ氏にお話を伺いました。

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『母なる証明』ポン・ジュノ監督インタビュー

本作を撮ろうと思った着想とは?

■ポン・ジュノ監督(以下、ポン監督):「普段は映画を撮り終えると、どういった着想で作品を撮ろうと思ったか忘れてしまうのですが、本作に限っては着想し始めた時期をしっかりと覚えています。あれは2003年、A4のレポート用紙にストーリーラインを書き始めました。その時点で本作のクライマックスや全体の骨組みは出来ていましたね。
最初の着想・目的は母親役のキム・ヘジャさんでもあります。彼女の持っている温かい“韓国の母”のイメージをいかに破壊できるか、それがひとつの目的でした。それと母親という存在が極限状態に追い込まれると、どう豹変するかを描く事も目的です。
冒頭のシーンや様々なディテールが固まったのは2008年の3月でしたね」


ストーリー展開が絶妙だと思いました。脚本も担当されていますが大変だったのでは?

■ポン監督:「先ほどお話したように、クライマックスの展開はほぼ出来ていたのですが、そこまでの流れを作る際に様々な試行錯誤をしましたね。ストーリーのバージョンをいくつも考えました。
今回、非常に才能のあるパク・ウンギョさんと共同脚本をさせていただき、私は『グエムル -漢江の怪物-』『TOKYO!』の撮影の合間を縫って、パクさんとお互いが書いた展開をトスし合いながら脚本を完成させていきました。
脚本が完成するまでには時間が掛かりましたが、パクさんとの掛け合いで素晴らしい物ができたと思っています。ワインやウィスキーが熟成して、じっくり深まっていくのと同じですね」


本作はウォンビンさんの復帰作でもありますが、そのブランクを感じさせない演技だったと思います。ウォンビンさんが他の俳優さんと違う点はどこだと思われますか?

■ポン監督:「先ほど本作の脚本をワインやウィスキーと例えましたが、彼も同じような事が言えると思います。軍隊への入隊を体験したり、長期の休みを取ったことにより、彼もまた熟成されていったのではないでしょうか。偶然にも脚本が完成するまでの期間と、彼がブランクを持っていた期間は重なるんですよね。
花美男(韓国で言うジャニーズ系イケメンのこと)にも30代は訪れるんだなと思いましたね(笑)。人間が円熟していく様が演技に反映されていると思います。彼にはトジュンというキャラクターを完成させる上で、すごく助けられました。

演出で気をつけた事があるとすれば、彼の持っている“自然体・自然児”の雰囲気を壊さない事でした。初めてお会いしたとき、すごく強烈な印象を受けたのを覚えています。彼は田舎育ちで、幼少期は正に野原を駆け巡って遊んでいたそうです。それに良い意味で既にアイドルやイケメンスターとは遠く離れた存在になっていました。彼の持つ自然体を活かせるように努力しましたね。(ウォンビン演じるトジュンは、郊外で暮らす子供の心を持った純粋無垢な成年)

また、実際に撮影して気づいた事もあります。彼は大変負けず嫌いで、勝負欲が強いんですよ。でも非常に謙虚でそれを一切口に出しませんし、「大女優のキム・ヘジャさんに絶対に迷惑をかけたくない」とも言っていました。ただ私は彼の内面に“絶対に演技で負けられない!”という強い意志を感じたんです。
キム・ヘジャさんと彼が向き合って話すとても重要なシーンがあるのですが、キム・ヘジャさんの演技に押されずに彼も演技をスパークさせていましたね。モニター越しに見ているこちらもゾクっとした場面ですし、素晴らしい画が撮れたと思っています」


本作で監督ご自身が母親という存在に対して込めたメッセージとは何でしょうか?

■ポン監督:「本作では母親という存在に対して二重の側面を提示しています。ひとつは、母親の絶対の愛です。それは道徳の善悪を超えて息子を守る愛ですよね。もうひとつは、母性の神秘化です。母親の愛情は絶対的であるが故に、それがいかなる状況でも当然になってしまった場合、母性を神秘化することになりかねません。
私はその絶対的な愛と、神秘化してしまう母性を壊す作業を本作で同時にやっています。
そこには、それは本当に良いことか? と言う道徳的な問題の提示も含まれています。

本作の終盤、母親は獣の境地にいたっています。人間の親子というよりは、獣の親子に近いかもしれません」


キム・ヘジャさん演じる母親は監督ご自身の中で完璧な母親ですか?

『母なる証明』ポン・ジュノ監督インタビュー

■ポン監督:「完璧な母親というよりは、愛と執着心の境界線にいる母親だと思っています。息子を守るという事が、ある意味強迫観念の様になっていて、とてもヒステリックな状況に置かれています。なぜ彼女がそうなってしまったのかは劇中で語られていますが、この母親の性格や人柄というのは、思わず指を切ってしまう冒頭のシーンで全て描かれていると思います。彼女は不安や強迫観念にいつも苛まれているんです。なので完璧な母親や平凡な母親とは、出発点が違うんですよね」


日本でもアメリカでも親子の絆が薄れてくると、それを問い直すために親子の映画が作られる事がよくあります。本作は監督のパーソナルな所から製作がスタートしていますが、現在韓国では親子の絆はどういったものになっていますか?

■ポン監督:「現在韓国では家族を取り巻く状況がとても奇妙な事になっています。私自身そんなにリサーチしているわけではありませんが、最近韓国では女性が結婚しなくなり、子供を産まず出産率が激しく落ちているんです。これはある意味女性達がこれまでの韓国社会に対して復讐しているんではないかと感じるんです。それは養育の面で、社会も男性も助けなかったからなのかも知れません。そういった意味で離婚率も増えて、家庭崩壊している家族も多いですね。
また不思議な事に親離れしない子供も増えてきています。全世界を通してみても、韓国では自立する時期が非常に遅く、30代になっても親から自立しないケースもあります。逆に親も子供がその歳になっても、子離れ出来ない場合もあります。
それと、これはどの国にも言える事だと思うのですが、男性が結婚するとなると三角関係が絶対生まれますよね。韓国ではこの嫁姑の争いがすごく激しいんですよ。まるで闘争をするかのように(笑)。TVドラマもこの嫁姑の葛藤を描いた作品がすごく多いです」


次回作のテーマになるんじゃないですか?

■ポン監督:「本作でもちょっとそういう部分が出てきますよね。息子の女性関係を探って、母親が性のことまで統制しようとしてます(笑)」


数ある監督ご自身の作品と、本作の違いはどこだと思われますか?

■ポン監督:「前作と比較しても外面的なものは、私が好きな犯罪ドラマになっています。小さい頃から犯罪ドラマが大好きで、心理小説や推理小説を多く読んでいましたね。これまではその犯罪ドラマを全編にわたって描いてきています。
例えば『ほえる犬は噛まない』(2000年)も犯罪ドラマだと思っています。もちろん人間では無く犬に対しての犯罪ですが。『殺人の追憶』(2003年)は言うまでもないですし、『グエムル -漢江の怪物-』もモンスター映画にも取れますが、モンスターが子供をさらってしまう、ある意味誘拐ドラマとも言えますよね。このように今までは犯罪ドラマが主軸の作品を撮ってきました。
『母なる証明』では母親の本質を問いかける事を主軸においているので、その辺が他の作品との違いだと思います」

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『母なる証明』
配給:ビターズ・エンド
公開:2009年10月31日
劇場:シネマライズ、シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほか全国にて
公式HP:http://www.hahanaru.jp/

©2009 CJ ENTERTAINMENT INC. & BARUNSON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

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